2018年6月13日水曜日

動的平衡という生命力を知る


「動的平衡3 チャンスは準備された心にのみ降り立つ」:福岡伸一氏を読んでいる。今日、氏とノーベル賞を受賞した山中教授は、私の様など素人に分かり易く生命工学を教えてくれる方々だ。その意味で、この本もエッセーの形はとってはいるものの、述べられている事は全て、生命工学に関するものだ。それも唯、専門分野に徹するのではなく、広範囲な知識と融合させながら、語るので奥深いのだ。エントロピーの法則は熱力学を学んだ者であれば、当然知るべき世の中を制する原理原則なのだが、それと生命体の日々行っている進化を重ね合わせる所が氏の氏たる所以かもしれない。フェルメールへの造詣で有名な氏ではあるが、音楽と生命の連鎖についても本文中では触れており、芸術とは実は生命体として当然の行為の結果であるようにも思え、心強く感じた次第だ。

かと言って、現実のガン治療などから目を背ける訳ではなく、更にはSTAP細胞にも触れ、老化や命の水、遺伝子解析や抗生物質にもちゃんと言及する幅の広さを見せてくれる。読んでいて、何となく分かった気がして、少し賢くなった良い気分にさせてくれるのも、氏の性格の巧みな比喩を使った上手な文章力だからだろうか。圧巻は腸内細胞の言及。何故、帝王切開の子供がそうではない正常分娩の子供に較べ、病気がちになるのかの説明は衝撃的であり、感動的でもある。本当に生命を良く出来、良く改良され、良く進化したものだと感心するばかりだ。そして、最近は陽の目をちゃんとみている(やや過大な期待をお持ち過ぎの様な気もするが)、腸内で活躍する微生物だが、ここでもその存在価値にしっかりと言及され、人間は他の生物と共生していると、地球の覇者と驕る人類をしっかりと牽制している。私なんかは、絶対的な細胞数で勝る彼らが創造主であり、彼らによって人類は生かされているだけと思っているのだが、それも極端な比喩に過ぎないのだが。エントロピーの法則である破壊と分解・死滅という運命に必死で逆らいながら、手を変え品を変え、日々進化する生命に対し、氏の視点は暖かく熱い。今、一度我が身を振り返り、謙虚になるには、氏の本は実に便利でもあるのだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿