2017年5月19日金曜日

妊娠なる重荷を担う事


「産まなくても、産めなくても」:甘糟りり子氏を読んでいる。まさに表題にあるように、女性の妊娠を中心とした短編集だ。氏は既に50歳の超えた熟女であるが、その分色々な人生を苦く、甘く描き出してくれる。主人公のラインアップは以下の通りだ。女性の、ヤリ手弁護士&オリンピックを目指すランナー&元人気サロンの副店長&観葉植物の販売会社社員&アパレル社員、男性の無精子症の建築士&アパレル社員と多彩だ。しかも、最終章は未来を見据えた作品であり、時代の先まで読んでくれている。有難い。どの章にも共通するのが、妊娠であるが、その過程に至るまでのストーリーが多彩なのだ。如何に女性が妊娠という世間の責務に耐えているのかが、強く感じ取れる作品となっている。女性であれば子供が欲しいと思うのは当然としても、色々な形でのチャレンジがあっても良いという事を氏は作品を通じて訴えている気がする。更には、昨今の近代医学にも触れ、卵子凍結、ホルモンコントロール、人工授精、無精子症、流産、不育症、養子縁組、人工子宮と未来系まで加わる。今や、晩婚及び高齢出産が当たり前の日本でも、依然としてその手前で不妊で悩んだり、あるいは夫婦としての在り方に立ち戻ったり、母子家庭で生活苦に苦しんだり、それぞれだ。産まないという選択肢も、産めないという現実も一つの社会の構図だと思う。産まれてくる子供に責任は無い分、親となる大人は自分の人生だけではない視点で、長い人生を見詰め直す必要があるのだろう。女性は妊娠して当たり前、あるいは、子供をもって一人前。そんな旧態然とした世間の常識に苦しむ女性たちの姿、あるいは無精子で男としてのプライドを打ち砕かれる男性の姿も又、弱い人間の模写であり、まるで現実に存在するかのような臨場感をもって、物語は展開してゆく。幸か不幸か、私自身は子供にも恵まれ、それなりの人生経験も積んでも来たが、当初は女の子だけしか出来なかった時は、周囲から何気ない中傷を受けた記憶がある。最後に、奇跡的に愚息を得たのは出来過ぎでもあるのだが、それも又、人生の面白い所だろう。願いは叶う。どんな形であれ。そう思うし、そう思うべきだと思う。小説というある意味での人生シミュレーションを読みながら、自らのライフストーリーを見直す事も一つの読者の喜びでもあると思う。



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